非正規のボーナスが正社員の4割は違法?「7割を下回る分は違法」とした高裁判決
💡 サクッと結論!
- ✅ 賞与が正社員の4割では低すぎ、7割を下回る分は違法と高裁が判断。
- ✅ 家族手当・住宅手当の差は生活費補助の性質から違法。
- ✅ 待遇差の理由は会社に説明を求められ、退職時にまとめて交渉も可能。
賞与の明細を開いたとき、隣の席の正社員と自分の金額の差に、手が止まった経験はないでしょうか。同じ窓口で同じ仕事をしているのに、ボーナスは半分以下、家族手当はゼロ。「非正規だから」と自分に言い聞かせてきた人ほど、その差を口に出せずにいます。
2026年8月31日の弁護士JPニュースの報道によると、勤続約22年の無期契約社員の女性が正社員との待遇格差を争った訴訟で、裁判所は賞与の格差を「正社員の70%を下回る限度で違法」とし、家族手当と住宅手当の差も違法として、会社に約193万円の支払いを命じたと報じられています。この記事では、判決が引いた「7割ライン」の意味、基本給の差だけが適法とされた理由、そして待遇差を会社に問い直す具体的な方法を、労働組合の立場から解説します。
※この記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。
★ 何が起きた?勤続22年の非正規女性の賞与格差を「違法」とした判決
結論から言うと、裁判所は「無期契約社員だから」という理由だけで賞与や生活費に関わる手当に大きな差をつけることを、社会通念上許されない不合理な相違だと判断しました。弁護士ドットコムの報道によれば、この判決は仙台高等裁判所が2025年9月に言い渡したもので、女性側が最高裁に上告受理を申し立てましたが2026年4月に受理されず、高裁判決が確定したと報じられています。
原告の女性は2002年4月にテレビ局の子会社に入社し、場外馬券売り場で伝票の起票や銀行業務、事務所金庫の管理などの事務を担当してきました。雇用形態は当初「嘱託」、のちに「無期契約社員」と位置づけられたフルタイム勤務です。正社員と同じ職場で働きながら、賃金の各項目には次のような差がありました。
| 項目 | 契約社員と正社員の差 | 裁判所の判断 |
|---|---|---|
| 基本給 | 正社員の79.7〜82% | 違法ではない |
| 賞与 | 正社員の37〜43.3% | 70%を下回る限度で違法 |
| 家族手当 | 契約社員は不支給。正社員は配偶者13,000円・子1人7,000円 | 違法 |
| 住宅手当 | 契約社員10,000円。正社員20,000円 | 違法 |
出典:弁護士JPニュース(2026年8月31日)、弁護士ドットコムニュース(2026年6月26日)の報道をもとに作成。
一審の青森地裁八戸支部は、賞与と住宅手当についてはおおむね2012年4月以降、家族手当については2003年4月以降の差額を違法として約586万円の支払いを命じていました。二審の仙台高裁は違法という結論を維持しつつ、「無期契約社員への不合理な格差が許されない」という社会のルール(公序)が成立したのは働き方改革関連法が施行された2020年4月1日だと判断し、認容額を約193万円に減らしたと報じられています。
「契約社員だから」の一言では、もう差を正当化できない時代に入っています。
★ なぜ基本給の差は適法で、賞与と手当の差は違法なのか
答えは、賃金の項目ごとに「何のために払っているのか」が違うからです。裁判所は待遇をひとまとめに比べるのではなく、基本給・賞与・各手当のそれぞれについて、その性質と目的に照らして差が不合理かどうかを判断します。この「項目ごとに見る」考え方は、2018年と2020年の最高裁判決で確立されたものです。
【賞与の「7割」という線はどこから来た?】
賞与には、会社の業績を踏まえた「労働の対価の後払い」と「功労への報奨」という性質があります。原告の女性は正社員と同じ職場で長年働いており、この性質は無期契約社員にも当てはまると考えられます。裁判所は正社員と同額まで求めたのではなく、「70%を下回る部分」を違法としました。報道では7割とした理由の詳細までは伝えられていませんが、正社員との仕事の範囲や責任の違いを差し引いたうえで、なお下回ってはならない線として引かれた数字と読むことができます。
この線は法律に書かれた数字ではなく、この事案の事実関係から導かれたものです。職場によって割合は動きますが、「正社員の4割では低すぎる」という判断が高裁で示され確定したことは、同じ悩みを持つ人にとって大きな手がかりになります。
【家族手当・住宅手当はなぜ「違法」になった?】
家族手当と住宅手当は、扶養家族がいる人や住居費を負担する人の生活を支えるための「生活費補助」です。家族を養う負担や家賃の負担は、正社員か契約社員かで変わりません。だから同じ職場で同じように働く人に対して、この手当だけを払わない、あるいは半額にする理由は説明しにくいのです。裁判所は、こうした手当の性質から差を違法と判断しました。
これに対して基本給は、職務の内容や配置転換の範囲、長期的なキャリアの違いを反映しやすい項目です。原告の担当業務が比較的軽易な事務に限られていたことなどから、正社員の約8割という差は不合理とまでは言えない、とされました。
裁判所が待遇差を見るときの3つの物差し
- ✓ 仕事の内容と責任の重さが正社員とどれだけ違うか
- ✓ 転勤や配置転換の範囲が正社員とどれだけ違うか
- ✓ その手当や賞与が「何のために」払われているか(性質と目的)
【最高裁の先例とはどう違う?】
2020年10月の最高裁判決では、大学のアルバイト職員への賞与不支給や、駅売店の契約社員への退職金不支給が「不合理とまでは言えない」とされました。この判決だけを見ると「非正規に賞与がなくても合法」と読めてしまいますが、同じ日に出た日本郵便の事件では、扶養手当や年末年始勤務手当、夏期冬期休暇の差は違法と判断されています。最高裁は「賞与は常に不要」と言ったのではなく、その職場の実態と手当の性質に照らして項目ごとに判断したのです。
今回の判決は、この枠組みを「正社員と同じ職場で長年働いてきた無期契約社員」に当てはめ、賞与についても具体的な割合の線を引いた点で一歩踏み込んでいます。
📣最高裁の判断枠組みは、ハマキョウレックス事件・長澤運輸事件(2018年6月)、大阪医科薬科大学事件・メトロコマース事件・日本郵便事件(2020年10月)の各判決で示されています。厚生労働省の「同一労働同一賃金特集ページ」にガイドラインと裁判例の整理があります。
「非正規に賞与は不要」ではなく「項目ごとに理由が要る」が今の裁判所の立場です。
★ 「無期契約社員」は法律の空白?パート・有期・派遣との違い
この判決が注目された最大の理由は、原告が法律の守備範囲の「外側」にいた人だったからです。パートや有期契約で働く人と正社員の不合理な待遇差を禁じる法律はありますが、直接雇用で無期・フルタイムの契約社員は、その法律の対象になりません。裁判所はこの空白を、民法の「公序良俗」という一般ルールで埋めました。
【自分はどの法律に守られている?】
働き方によって、待遇差を争うときに使える法律が異なります。自分がどこに当てはまるかを先に押さえておくと、会社に説明を求めるときの根拠がはっきりします。
| 働き方 | 待遇差を争う根拠 |
|---|---|
| パート(短時間) | パート有期法8条・9条(不合理な待遇差の禁止・差別的取扱いの禁止) |
| 有期契約(契約社員・アルバイト等) | パート有期法8条・9条 |
| 派遣社員 | 労働者派遣法(派遣先均等・均衡方式または労使協定方式) |
| 無期・フルタイムの契約社員 | 直接の規定なし。今回の判決は民法の公序良俗違反として救済 |
出典:e-Gov法令検索「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パート有期法)ほかをもとに作成。
有期契約から無期転換した人は、この表の一番下に当てはまります。「無期になった途端に法律の保護から外れる」という指摘は以前からあり、弁護士ドットコムの報道でも、労働法に詳しい弁護士が立法の不備を指摘しています。今回の判決は、その空白にいる人でも救済され得ることを示した点で、無期転換後の契約社員にとって重要な意味を持ちます。
【2026年10月から何が変わる?】
2026年10月には、パート・有期で働く人の待遇に関するルールが改正されます。厚生労働省の解説によると、正社員との待遇の違いについて内容と理由の説明を求めることができる旨を、会社が労働条件として明示する義務が加わります。あわせて、家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇について、条件を満たす場合は正社員と同一の扱いをすることがガイドラインに明記されます。今回の判決で違法とされた家族手当と住宅手当は、まさにこの改正で名指しされた項目です。
無期契約社員は直接の対象ではありませんが、判決とガイドラインの方向が一致したことで、「なぜ差があるのか」を会社に問いやすい環境になります。
2026年10月改正で押さえる3点
- ✓ 待遇差の内容と理由の説明を求められることが労働条件に明示される
- ✓ 家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇の同一扱いがガイドラインに明記
- ✓ 説明の方法や正社員転換制度の情報開示が見直される
法律の隙間にいた人にも道が開いた。この判決の一番の意味はそこにあります。
★ 相談現場で見る「賞与ゼロ・手当なし」の実態
労働組合の相談窓口で目立つのは、待遇差そのものより「聞けない」という悩みです。賞与が正社員の半分以下でも、家族手当が自分だけ付かなくても、理由を尋ねると「契約社員だから」で終わってしまう。そこで引き下がると、差は何年も固定されます。今回の原告が22年分の差を争ったことは、放置した期間の長さがそのまま損失になることを示しています。
もう一つ多いのが、「非正規は説明を求めてはいけない」という思い込みです。パート・有期で働く人には、待遇差の内容と理由について説明を求める権利があり、会社は求められたら説明しなければなりません。説明を求めたことを理由に不利益な扱いをすることも禁じられています。無期契約社員には直接の規定がありませんが、今回の判決が示すように、理由のない差は法的に問題になり得るため、説明を求めること自体に不当なところはありません。
こんな説明・兆候には注意が必要です
- ❗ 「契約社員だから」という理由だけで賞与や手当の差を説明される
- ❗ 正社員と同じ仕事・同じ責任なのに、家族手当や住宅手当が自分だけ付かない
- ❗ 説明を求めたら「文句があるなら辞めてもいい」と言われた
- ❗ 無期転換したあと、待遇が有期のときと何も変わっていない
上のような状況は、いずれも「差に理由があるか」を確かめる価値があるサインです。理由が説明できないなら、その差は不合理と判断される余地があります。
📣パート有期法14条は、会社に待遇差の内容と理由を説明する義務を定め、説明を求めたことを理由とする不利益取扱いを禁じています。
「聞けない」を放置した年数が、そのまま取り戻せない差になります。
★ 待遇差を問い直すために、今日からできること
最初の一歩は、自分の待遇と正社員の待遇の「差」を書き出すことです。感覚ではなく、規程と明細で確かめます。賃金規程や就業規則には、賞与の算定方法や各手当の支給条件が書かれています。就業規則は働く人がいつでも見られるよう周知される決まりなので、見せてもらうこと自体は正当な求めです。
【会社に説明を求めるときの伝え方は?】
口頭より書面やメールが向いています。あとで「言った・言わない」にならず、会社の回答も記録に残るからです。内容は感情を交えず、事実と質問だけにします。たとえば「私と同じ業務を担当する正社員との間で、賞与の支給率と家族手当・住宅手当の支給に差があります。その差の内容と理由をご説明ください」という形です。回答がない、または「契約社員だから」以上の理由が出てこない場合、それ自体が次の相談先で使える材料になります。
説明を求める前にそろえておく記録
- ✓ 自分の給与明細と賞与明細(過去分もできるだけ)
- ✓ 賃金規程・就業規則の賞与と手当の条項
- ✓ 自分と正社員の業務内容・責任・転勤の有無を比べたメモ
- ✓ 会社とのやり取り(メール・面談の日時と内容)
【社外の相談先はどこ?】
会社の説明に納得できないときは、各都道府県労働局の「総合労働相談コーナー」で無料相談ができます。パート・有期の待遇差については、都道府県労働局の雇用環境・均等部門が助言や紛争解決の援助を行っています。裁判で争う前の手続きとして、原則3回以内の期日で決着を図る労働審判もあります。
過去の差額を請求する場合は期限に注意が必要です。賃金を請求できる権利は原則として3年で時効になり、気づくのが遅れた分だけ取り戻せる範囲は狭まります。差に気づいたら、記録を残しながら早めに動くことが結果を左右します。
📣賃金請求権の消滅時効は労働基準法115条で5年と定められ、当分の間は3年とされています。
まずは規程と明細で差を「見える化」する。行動はそこから始まります。
★ 待遇差に納得できないまま辞めるなら、退職代行テミスで交渉してから
先にお伝えすると、今回の原告のように過去22年分の差額を裁判で取り戻すような案件は、弁護士に依頼するのが適切です。労働組合には訴訟の代理はできません。そのうえで、「会社と話しても変わらない。もう辞めたいが、未払いの手当や最後の賞与だけは取りこぼしたくない」という方には、労働組合が運営する退職代行が選択肢になります。
退職代行テミスは、労働委員会の資格審査を経た労働組合「労働基準調査組合」が運営しており、会社と交渉する権限を持っています(※)。退職の意思を伝えるだけでなく、退職日の調整、有給休暇の消化、未払いの賃金や手当の請求まで、あなたが会社と直接やり取りしないまま進められます。賞与については支給日に在籍していることが条件とされる会社が多いため、支給日を確認してから退職日を組み立てる相談にも応じています。
📣※団体交渉権は憲法28条で保障され、労働組合法6条が労働組合の交渉権限を定めています。会社には、正当な理由なく団体交渉を拒否できない義務があります。
料金は正社員・契約社員・派遣社員は税込22,000円、パート・アルバイトは税込12,000円です。追加料金は原則かかりません(※振込手数料や後払い手数料を除きます)。退職したことを理由に会社から損害賠償請求や懲戒解雇処分を受けた場合には、顧問弁護士が撤回交渉にあたります。相談はLINEで24時間受け付けており、相談だけなら費用はかかりません。
退職代行テミスが対応できること
- ✓ 労働組合の交渉権で退職日・有給消化・未払い賃金や手当を交渉
- ✓ 料金は税込22,000円または税込12,000円。追加料金は原則不要
- ✓ 退職に対する損害賠償請求・懲戒解雇には弁護士が対応
辞める前に「取り戻せるもの」を整理する。その作業を組合が代わりに引き受けます。
★ よくある質問(FAQ)
Q: 契約社員にボーナスがないのは違法ですか?
A: それだけで直ちに違法とは言えません。裁判所は、賞与が何のために払われているか、仕事の内容や責任、転勤の範囲が正社員とどれだけ違うかを見て判断します。正社員と同じ仕事をしているのに賞与が大きく下回る場合は、今回の判決のように不合理な差として違法と判断される可能性があります。
Q: 正社員の何割なら違法になりますか?
A: 法律に決まった割合はありません。今回の判決では、正社員の37〜43.3%だった賞与について「70%を下回る限度で違法」とされましたが、これはこの事案の事実関係から導かれた線です。職場ごとの仕事内容や責任の違いによって、許される差の幅は変わります。
Q: 無期転換した契約社員は、待遇差を争えないと聞きました。本当ですか?
A: パート有期法の直接の対象ではありませんが、争えないわけではありません。今回の判決は、無期・フルタイムの契約社員について、民法の公序良俗違反として賞与と手当の差を違法と判断しました。無期転換後の人にも救済の道があることが示されています。
Q: 待遇差の理由を会社に聞いたら、不利益を受けませんか?
A: パート・有期で働く人については、説明を求めたことを理由に不利益な扱いをすることが法律で禁じられています。無期契約社員も、説明を求めること自体に不当な点はありません。書面やメールで尋ね、回答を記録に残しておくと、あとの相談や交渉で役立ちます。
Q: 退職するとき、もらえていない賞与や手当を請求できますか?
A: 賃金として確定している未払い分は請求できます。賞与は支給日に在籍していることを条件とする会社が多いため、退職日の設定が結果を左右します。労働組合が運営する退職代行なら、退職日の調整と未払い分の請求を会社と交渉できます。過去の待遇差そのものを損害として争う場合は弁護士に相談してください。
★ まとめ|「非正規だから」で終わらせない判断軸
この記事の要点
- ✓ 勤続22年の無期契約社員の賞与格差を高裁が「7割を下回る限度で違法」と判断
- ✓ 家族手当・住宅手当は生活費補助の性質から差が違法、基本給の約2割差は適法
- ✓ 無期・フルタイムの契約社員は法律の空白だが、公序良俗で救済され得る
- ✓ 待遇差の説明を求め、記録を残し、3年の時効の前に動くことが結果を左右する
「契約社員だから仕方ない」と受け止めてきた差の中には、法律的に説明のつかないものが混じっています。今回の判決は、賞与も手当も「何のために払うか」で判断されること、そして法律の外側にいた無期契約社員にも救済の道があることを示しました。
判断の軸は「差の大きさ」ではなく「差に理由があるか」です。理由が説明できる差なら受け入れる、説明できない差なら問い直す。この一点で考えれば、無理に争いを大きくする必要も、黙って我慢し続ける必要もありません。
問い直しても変わらず、辞める決断をしたなら、労働組合が運営する退職代行テミスにご相談ください。退職日の調整から未払いの賃金や手当の請求まで、あなたに代わって会社と向き合います。相談は無料で、LINEなら24時間受け付けています。
待遇の差は、あなたの価値の差ではありません。理由を問う権利はあなたにあります。
「うちの賞与の差、法律的にどうなの?」の確認だけでも、まずはLINEでお聞かせください。
退職代行テミスは労働組合として会社と直接交渉します。
料金は正社員・契約社員・派遣社員は税込22,000円、パート・アルバイトは税込12,000円。相談は無料です。