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労働問題解決の選択肢としての労働審判と少額訴訟や保全手続
2026.05.27 ・ 編集部 ・ 退職代行/基礎知識 約14分で読めます

労働問題解決の選択肢としての労働審判と少額訴訟や保全手続

💡 〈サクッと結論!〉

  • 費用対効果を考慮した労働問題の解決策として労働審判、少額訴訟、保全手続がある
  • 労働審判、少額訴訟、保全手続を行う際には証拠集めが重要である
  • 労働問題の内容によって労働審判、少額訴訟、保全手続を使い分ける

会社を辞めるときの労働問題として、給与や残業代、有給休暇の賃金などの未払い問題や、不当な懲戒解雇の問題が大きなものとして考えられます。

「退職代行を利用して会社を辞めても、きちんと給与は支払ってもらえるのだろうか」「急に辞めることによって、会社から懲戒解雇にされるのではないか」など、不安に思われている方は少なくありません。結論から申し上げますと、このようなトラブルは誰にでも起こり得る問題です。

未払いに関しては当組合から会社に督促を行いますし、懲戒解雇に関しては会社側のハードルが非常に高いため、当組合から代表者へデメリットを説明することでほとんどの場合は未然に防ぐことができています。しかし、就業規則に違反した理由だけで解雇可能だと誤解している経営者も多いため、言い渡される可能性はゼロではありません。本記事では、会社へ督促しても支払いがない場合や、実際に懲戒解雇を言い渡された場合の法的な対処方法について詳しく解説します。


★ 退職代行を利用して会社を辞める際の労働問題の解決方法

退職代行サービスを利用した際のトラブルが、業者からの話し合いで解決しない場合、労働基準監督署への相談、労働審判、少額訴訟、通常訴訟などの手続きがございます。

【労働基準監督署への相談】

労働基準監督署は「雇用者が法令を遵守しているか監督する機関」であり、個別の紛争を代わりに解決して救済してくれるわけではありません。また、明確な証拠がない場合や、一度も会社に請求を行っていない場合、少額の案件で優先順位が低いと判断された場合は、すぐに動いてくれない可能性が高いです。

💡 労働基準監督署に動いてもらうコツと注意点

  • 「相談」ではなく「申告(通報)」を行う:違法行為の是正を求める適切な行動をとることで、対応の可能性が高まります。
  • 対面で申告を行う:電話やメールよりも熱意や状況が伝わりやすく、証拠資料も手渡せます。
  • 是正勧告に強制力はない:指導が入っても必ず賃金が支払われるとは限りません。対応が難しい場合は、無料で利用できる労働局の「和解あっせん」を紹介されることもあります。

【労働審判】

労働審判は、労働問題に関する紛争を迅速かつ効率的に解決するための手続きです。原則として3回以内の期日で終了するため迅速性があり、裁判に比べて簡易的で、個人でも申し立てが可能です。ここで出される決定は民事判決と同様の強制力(強制執行が可能)を持ち、約80%近くがこの手続きのみで解決しています。期間は準備も含めて半年ほどかかる場合があります。

【少額訴訟】

簡易裁判所で行われる、請求金額が60万円以下の金銭トラブルに限定された簡易な裁判手続きです。原則として1回で審理が終了し、裁判官が主導する法律に則った話し合いに近いものです。手続きが簡単で費用も安く抑えられますが、不当解雇の無効確認など、金銭以外の解決を求める場合には利用できません。

【通常訴訟】

金額や問題の性質に制限がなく、広範なトラブルに対応できる手続きです。「解雇無効の確認」「パワハラの損害賠償」などの民事訴訟だけでなく、悪質な賃金未払いに対する刑事訴訟も含まれます。弁護士に依頼するのが一般的ですが、解決までに1〜2年、控訴があればそれ以上の時間と、数十万円以上の高額な費用(着手金・成功報酬など)がかかる点がデメリットです。

【結論としてのおすすめ】
通常裁判は時間と費用がかかりすぎるため、簡易性と費用対効果を考慮すると、自分で進めることもできる「労働審判」と「少額訴訟」の2つを問題内容に合わせて使い分けるのがベストです。

★ 労働審判と少額訴訟を利用する場合の事例

それぞれの制度にあてはまる具体的な事例は以下の通りです。

  • 労働審判を行う事例:給与・残業代・有給休暇の賃金の未払い問題、懲戒解雇などの不当解雇の問題など全般。
  • 少額訴訟を行う事例:請求額が60万円以下であることが明確な給与や残業代などの未払い問題。

当組合には「退職届を提出したが受理されず、その後に会社から懲戒解雇通知を渡された。給与はもらえないのか」といった悪質な事例の相談も寄せられています。このようなトラブルに対抗するためにも、各制度の違いを正しく理解しておきましょう。


★ 労働審判と少額訴訟の違い

労働審判と少額訴訟は、目的や手続きにおいて以下のような違いがあります。

【労働審判】

目的:労働問題の迅速かつ柔軟な解決。労働法に精通した労働審判官と労働審判委員(専門家)が参加する合議制で、双方の主張を聞きながら調停を行います。
手続き:地方裁判所に申し立て、原則3回以内の期日で終了。結果(調書)は確定判決と同じ効力を持ちます。不服がある場合は異議申し立てにより通常訴訟へ移行します。

【少額訴訟】

目的:60万円以下の金銭請求における労働者の権利保護。労働問題に限らず幅広い民事を扱い、裁判官が単独で判断します。
手続き:簡易裁判所に訴状を提出。原則1回の期日で口頭弁論や証拠調べを行い、即日判決が下されます。ただし、相手方が通常訴訟への移行を求めることも可能です。

⚠️ どちらの手続きでも「証拠集め」が最重要です!
給与明細書、タイムカード、勤怠管理表、源泉徴収票、預金通帳、就業規則・賃金規程の写し、雇用契約書、業務命令書、メールやチャットの写し、会社とのやり取りの録音などを日頃から集めておきましょう。

★ 労働審判・少額訴訟にかかる日数と通常の裁判にかかる日数との比較

それぞれの解決までにかかる期間(日数)の目安は以下の通りです。

  • 【少額訴訟】原則1回(即日)
    最も迅速に処理され、1回の期日で審理を終えて即日判決が出ます。
  • 【労働審判】約3か月以内
    原則3回以内の期日で終了することを目指して迅速に進められます。
  • 【通常裁判】約1年〜2年程度
    詳細な手続きを重ねるため長期化しやすく、控訴等があればさらに延びる可能性があります。

★ 実際の労働審判と少額訴訟の書類の記入方法と流れ

【労働審判】

必要書類:申立書(趣旨・理由・予想される争点・交渉経緯を記載。裁判所HPに雛形あり)、申立手数料(収入印紙)および郵便切手、相手方の商業登記簿謄本、基本的な証拠書類(雇用契約書、タイムカード、解雇通知書など)。
※相手方の数+3通の申立書写し、相手方数の証拠写しが必要です。

【労働審判の流れ】
① 申立書の作成と提出 ⇒ ② 裁判所から当事者双方へ呼出状の送付 ⇒ ③ 労働審判手続期日に参加(争点確認・証拠調べ) ⇒ ④ 調停(合意)または審判 ⇒ ⑤ 異議がなければ審判確定(和解とみなす) ⇒ ⑥ 拒否された場合は強制執行(※異議が出れば通常訴訟へ移行)

【少額訴訟】

必要書類:訴状(簡易裁判所に定型用紙あり)、申立手数料(10万円ごとに1000円加算の印紙)、郵便切手(相手方送付用)、添付書類(法人の場合は登記事項証明書、訴状副本など)、証拠書類の写し(相手方の数+1通)。

【少額訴訟の流れ】
① 訴状の作成(裁判所HP等の書式を利用、印鑑は提出時に押印) ⇒ ② 証拠のコピーに「甲第1号証」等の赤番号を振る ⇒ ③ 簡易裁判所の窓口へ提出 ⇒ ④ 窓口の説明に沿って手続き ⇒ ⑤ 裁判期日に出廷(裁判官の主導で1回で終了)

★ 費用の比較: 労働審判・少額訴訟 vs 通常裁判

自分で手続きを行う場合(本人訴訟)と、弁護士に依頼する場合の費用相場を比較します。

手続き種類 本人が自分で行う場合 弁護士に依頼する場合(追加費用)
労働審判 合計:約7,500円〜33,000円前後
(印紙代 5千〜2万円 / 郵券代〜3,500円 / 印刷・郵送・交通費)
プラス約35万〜80万円前後
(相談料:30分5,500円 / 着手金:10万〜30万円 / 成功報酬:利益の10〜30% / 日当)
少額訴訟 合計:約9,000円〜21,000円前後
(印紙代 1千〜6千円 / 郵券代 約5,200円 / 証明書代 / 印刷・郵送・交通費)
プラス約15万〜25万円前後
(着手金:10万円〜 / 成功報酬:10〜30% / 相談料・日当など)
通常裁判
(手続きが極めて複雑なため非推奨)
総額:約50万〜90万円程度
(不当解雇撤回で50万〜60万円、300万円の残業代請求成功で80万〜90万円程度が目安)

上記のように、自分で労働審判や少額訴訟を行えば費用を大幅に抑えられるため、非常に費用対効果が高いと言えます。


★ 懲戒解雇の場合の離職票への記載と具体的な扱い(影響・リスク)

万が一、会社から懲戒解雇を言い渡されてしまった場合、労働者には以下のような極めて大きな不利益やリスクが生じます。

  • 【離職票への記載と再就職への悪影響】
    離職証明書の「重責解雇(労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇)」欄に○がつき、具体的な内容が記載されます。これは離職票に反映されるため、転職活動時に「退職理由が懲戒解雇である」と企業側に知られ、採用を見送られる可能性が非常に高くなります。隠して入社しても、虚偽が発覚すれば新たな解雇理由(経歴詐称)になり得ます。
  • 【懲戒解雇後の給料が即日ストップ】
    懲戒解雇は即日で実施されることが多く、労働契約がその場で取り消されるため、予期せぬタイミングで突然収入が途絶えてしまいます。
  • 【失業保険の扱いが不利(自己都合扱い)】
    懲戒解雇の場合、失業保険は「自己都合」と同じ扱いになります。そのため、7日間の待機期間に加え、2か月の給付制限期間が経過するまで支給されず、生活に大きな困窮をもたらします。
  • 【退職金の不支給・減額】
    多くの企業では就業規則により、懲戒解雇時の退職金を不支給または減額するよう定めています。ただし、これまでの功績をすべて無価値にするほどの重大な背信行為でない限り、裁判例では一部支払いを命じられるケースもあります。
  • 【解雇予告手当がもらえない】
    通常必要な「30日前までの解雇予告」ですが、労働基準監督署から「解雇予告除外認定」を受けられた場合、会社は予告なしに即時解雇でき、手当を支払う義務もなくなります。

★ 懲戒解雇処分を覆す方法としての保全手続き

通常裁判で解雇無効を争うと1〜2年(控訴で3年以上)かかり、その間の生活費が続かず労働者が諦めてしまうため、実質的に会社側が勝ってしまいます。このような不条理を防ぐために設けられているのが「保全手続(地位保全の仮処分)」です。

この手続きを行うと、「解雇は無効なので労働者の立場は変わらない」という決定を、裁判所が基本2〜3か月という短期間で下してくれます。手続きも簡単で、申立書(入社日・解雇日・困っている状況・無効の主張を記載)と証拠を出すだけです。

💡 労働者側が圧倒的に有利な仕組み
裁判において、労働者側は解雇が無効だという複雑な法理を説明する必要はなく、「解雇された事実」を伝えるだけで構いません。逆に会社側は、①就業規則の事由合致、②極めて重い罪、③事前の再三の注意、という3つの条件をすべて裁判所に立証しなければならず、横領等の犯罪行為でない限り会社側が納得させるのは非常に困難です。そのため、ほとんどの場合は労働者が勝ちます。

仮処分で労働者が勝つと、会社は解雇日から決定が出るまでの給与をまとめて支払い、その後も毎月の給与を払い続けなければなりません。会社側が不服として本裁判(数年かかる)を起こしても、その間ずっと給与を支払い続けるリスクがあるため、仮処分を起こされた時点で会社側は諦めて和解に応じざるを得なくなります。この保全手続は、労働者本人でも行うことが可能です。


★ まとめ

退職代行を利用する際、ごく稀に未払い賃金の督促に応じない会社や、不当な懲戒解雇処分を行ってくる会社が存在します。これらに対する解決策として、弁護士への通常裁判依頼は費用が高額になりますが、労働審判や少額訴訟、保全手続を当事者本人の手で行うことで、期間を短縮しつつ費用を大幅に安く抑えることが可能です。

金銭トラブル(60万円以下)なら少額訴訟、不当解雇や高額な未払いなら労働審判。そして、懲戒解雇処分を迅速に覆して生活を守るためには保全手続(地位保全の仮処分)が極めて有効です。いずれの場合も日頃からの証拠集めが成功の鍵を握ります。費用対効果を意識し、自分に合った最適な手段を選択しましょう。

「未払いを踏み倒す」「不当に懲戒解雇にする」といった会社の違法行為に泣き寝入りする必要はありません。
当組合が退職時のトラブル防止に向け全力でサポートいたします。
トラブルへの備えや解決の進め方について、まずはお気軽にご相談ください。
土日祝も休まず運営しております。
他の退職代行で断られた案件も、テミスなら解決可能です。

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