トラック運転手の残業上限は?36協定違反で送検された事例と労働時間の確かめ方
💡 サクッと結論!
- ✅ 運転の仕事の時間外労働は年960時間が上限。
- ✅ 月の上限は法律ではなく36協定で決まる。超えれば違反。
- ✅ 36協定は職場で見られる。周知は会社の義務。
結論からお伝えします。トラック運転手の時間外労働には、年960時間という法律上の上限があります。ただし、月あたりの上限は法律には書かれていません。月の上限を決めているのは、あなたの会社が結んだ36協定です。そこに書かれた時間を1分でも超えて働かせれば、それは労働基準法違反になります。
エンジンを切ってから、しばらくシートを降りられない。その状態が毎日になっているなら、いちど数字を確かめる価値があります。
本記事では、2026年8月に報じられた書類送検の事例を入口に、運転の仕事に適用される上限規制の中身、拘束時間や休息期間を定める改善基準告示との違い、自分の労働時間が上限を超えているかを確かめる方法、そして超えていたときの選択肢まで、労働組合の立場から解説します。
※この記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。
★ トラック運転者4人に月135時間57分の残業、副社長を書類送検|2026年8月の報道
2026年8月18日の労働新聞社の報道によると、佐賀労働基準監督署は、佐賀県鳥栖市の運送会社と同社の代表取締役副社長を、労働基準法32条違反の疑いで2026年7月23日に書類送検したとされています。
報道によれば、対象になったのはトラック運転者4人です。時間外労働は最長で月135時間57分に達し、36協定で定めた月120時間の上限を超えていたとされています。違反があったとされるのは2025年11月の1か月間の労働です。
ここが、多くの解説記事で語られない部分です。運送業の労働時間というと「2024年問題」や「年960時間」の話ばかりが並びます。ところが実際に送検の理由になるのは、その会社が自分で決めた協定の数字を超えたかどうか、である場合が少なくありません。
📣※書類送検は、捜査機関が事件を検察官へ送る刑事手続きです。この時点で有罪が確定したわけではありません。本記事の事例に関する記述は、報道された内容にもとづくものです。
「年」の数字より先に、「月」の数字を見てください。
★ トラック運転手の残業上限は何時間?年960時間と36協定の関係
順を追って整理します。労働基準法32条は、休憩時間を除いて1週40時間、1日8時間を超えて労働させてはならないと定めています。これが原則です。
この原則を超えて働いてもらうために会社が結ぶのが、36協定です。労働者の過半数で組織する労働組合、またはそれがない場合は労働者の過半数代表者と書面で協定を結び、労働基準監督署へ届け出ることで、協定に定めた範囲で時間外労働をさせられるようになります。
大事なのは、この36協定が「無制限の許可証」ではないという点です。効力が及ぶのは、協定に書かれた時間までです。それを超えた分については、そもそも協定が守ってくれません。だから32条違反として扱われます。
そのうえで、自動車の運転の業務には他の職種とは違う上限が設定されています。
| 項目 | 一般の職種 | 自動車の運転の業務 |
|---|---|---|
| 原則の上限 | 月45時間・年360時間 | 月45時間・年360時間(同じ) |
| 特別条項を結んだ場合の年間上限 | 年720時間 | 年960時間 |
| 月の上限(法律上) | 100時間未満 | 定めなし(36協定で決めた時間が上限) |
| 複数月の平均 | 2〜6か月平均で80時間以内 | 適用されない |
| 月45時間を超えられる回数 | 年6回まで | 制限なし |
出典:e-Gov法令検索「労働基準法」36条・140条にもとづき作成
年960時間という数字は一般の職種より緩く見えます。しかし本当に効いてくるのは、下の3行です。月の上限が法律に書かれておらず、複数月の平均規制もなく、月45時間を超えられる回数にも制限がない。つまり運転の仕事では、月ごとの歯止めを実質的に決めているのが36協定だけ、という状態になります。
【だから36協定の中身を見る意味がある】
- ✓ 月の上限が何時間と書かれているかで、違反ラインが決まる
- ✓ 年の合計が960時間を超えれば、協定の内容にかかわらず違反
- ✓ 36協定の周知は、労働基準法106条が定める会社の義務
★ 拘束時間・休息期間・連続運転|改善基準告示という別のルール
運転の仕事には、労働基準法とは別にもうひとつのルールがあります。厚生労働大臣が定める改善基準告示です。2024年4月1日から改正後の基準が適用されています。
労働基準法が「働いた時間」を規制するのに対し、改善基準告示は「拘束時間」と「休息期間」を規制します。拘束時間とは、始業から終業までの時間全体です。休憩や荷待ちの時間も含みます。
| 項目 | 基準(2024年4月1日から) |
|---|---|
| 1年の拘束時間 | 原則3,300時間以内(労使協定があれば3,400時間以内) |
| 1か月の拘束時間 | 原則284時間以内(労使協定があれば310時間以内、年6か月まで) |
| 1日の拘束時間 | 13時間以内。延長する場合も最大15時間 |
| 休息期間 | 継続11時間以上を基本とし、継続9時間を下回らない |
| 運転時間 | 2日平均で1日9時間、2週平均で1週44時間 |
| 連続運転時間 | 4時間以内。中断は1回おおむね10分以上、合計30分以上 |
出典:厚生労働省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」トラック運転者の改善基準告示
ここで知っておいてほしいことがあります。改善基準告示は大臣が定める告示であって、法律ではありません。そのため、違反しても直接の罰則はありません。労働基準監督署が監督や指導のなかで違反を見つけたときは、自主的な改善をうながす指導が行われます。
ただし、効かないという意味ではありません。労働基準監督機関と地方運輸機関のあいだには、相互通報の仕組みがあります。貨物自動車運送事業法の運行管理に関する重大な違反が疑われるときは、労基署から運輸機関へ通報が行きます。そこから車両の使用停止や事業停止といった行政処分につながることがあります。
もうひとつ、荷待ち時間の扱いです。荷主の都合で待たされている時間でも、指示があればすぐ動ける状態で待っているのであれば、それは労働時間として扱われます。「待っていただけ」という説明で労働時間から外されていないか、確認する価値があります。
★ 自分の労働時間が上限を超えているか確かめる3ステップ
やることは3つです。36協定を見る、給与明細から時間外労働の時間数を拾う、記録と突き合わせる。この順番で進めます。
まず36協定です。「うちの会社の協定なんて見たことがない」という方は多いのですが、労働基準法106条は、36協定を含む協定を、作業場の見やすい場所に掲示するなどの方法で労働者に周知させなければならないと定めています。事務所の掲示板、就業規則の綴じ込み、社内の共有フォルダ。まずはそこを探してください。
見るのは2か所だけです。1か月について延長できる時間と、1年について延長できる時間。今回報じられた事例なら、月120時間と書かれていたことになります。
次に給与明細です。時間外労働の時間数が記載されているはずですので、直近12か月分を並べます。年の合計が960時間に近づいていないか、月の数字が協定の時間を超えていないかを見ます。
最後に記録との突き合わせです。デジタコの記録、運転日報、日報の写真、点呼記録。給与明細の時間数より実際の拘束時間のほうが長いのであれば、その差が問題になります。在職中に手元へコピーしておいてください。退職後の取り寄せは、時間も手間もかかります。
在職中にそろえておくもの
- ✓ 36協定の写し、または掲示物の写真
- ✓ 直近12か月分の給与明細
- ✓ 運転日報・デジタコ記録・点呼記録など時間がわかるもの
★ 上限を超えていたときの選択肢|労基署への申告と未払い残業代
結論を先に書きます。労働基準監督署への申告と、未払い残業代の請求は、別の手続きです。両方を同時に進めることもできますが、どちらか一方をやれば他方も解決する、という関係にはありません。
労働基準法104条は、事業場に法律違反の事実がある場合、労働者はその事実を行政官庁または労働基準監督官に申告できると定めています。そして同条2項で、申告したことを理由に解雇その他の不利益な取扱いをすることを、使用者に禁じています。この2項に違反した場合の罰則も、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金と定められています。
申告先は労働基準監督署です。労働問題全般の相談であれば、各署に置かれた総合労働相談コーナーでも受け付けています。相談の際に、氏名を会社へ伝えないでほしいと申し出ることもできます。
・労働基準監督署(厚生労働省)
・総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
ただし、労基署は会社を是正させる行政機関であって、あなたの代理人ではありません。是正勧告によって未払い分が支払われる例は多いのですが、会社が応じないときに労基署が取り立てまでしてくれるわけではないのです。
残業代の側も確認しておきます。時間外労働の割増率は2割5分以上、そのうち1か月について60時間を超えた分は5割以上です。深夜(原則22時から翌5時)は2割5分以上、休日労働は3割5分以上が上乗せされます。長距離の運行が続く働き方では、深夜と時間外が重なる時間帯が多くなります。
📣※賃金の請求権の時効は、当分の間3年とされています(労働基準法115条、附則143条3項)。3年より前の分は請求できなくなります。
【要注意なチェックポイント】
- ! 荷待ち時間が労働時間から外されている
- ! 歩合給の割増賃金が計算されていない
- ! 固定残業代の対象時間を超えた分が支払われていない
ひとつでも当てはまるなら、月の労働時間だけでなく、金額の側も確かめてみてください。
申告と請求は別々の道です。片方だけで終わらせないでください。
★ 走り続けられないと感じたときの辞め方|労働組合の退職代行という選択肢
先に、できないことをお伝えします。退職代行テミスは、未払い残業代の金額をこちらで計算することはできません。タイムカードの写しなどの証拠がそろっていて、金額をご本人が計算されている場合に、退職の連絡と同時に請求をお伝えする形になります。それでも会社が支払わないときは、ご自身で労働審判を申し立てるほうが費用対効果は高くなります。
そのうえで、運送の現場でよくあるのが、辞めると言い出せないまま走り続けてしまう状況です。人が足りない。代わりがいない。今月の運行はもう組まれている。断ると次の配車で嫌がらせをされそうだ。そうした事情が重なると、退職の話を切り出すこと自体が高い壁になります。
退職代行テミスは、労働基準調査組合という労働組合が運営しています。労働組合には、組合員のために会社と交渉する権限があるため、退職日の調整、有給休暇の消化、未払い給与や退職金の支払い申し入れまでを、本人に代わって会社へ伝えられます。民間の代行業者は、この交渉ができません。
📣※団体交渉権は憲法28条で保障され、労働組合法6条が交渉の権限について定めています。訴訟の代理はできませんので、金額を争って裁判で決着させたい場合は弁護士が適しています。
料金は正社員・契約社員・派遣社員は税込22,000円、パート・アルバイトは税込12,000円です。相談は無料で、LINEなら24時間受け付けています。全国に対応しており、土日祝日も相談を受けています。就業規則に「退職は1か月前に申し出ること」と書かれていても、民法627条により、退職の申し入れから2週間で雇用契約は終了します。
運送の仕事を辞めるときに交渉できること
- ○ 残っている有給休暇を使い切ってから退職日を設定する
- ○ 制服や車両の鍵などの返却方法を郵送で済むよう伝える
- ○ 離職票などの必要書類を期日どおりに出すよう求める
有給休暇の残日数がわからない場合も、組合から会社へ確認できます。
なお、退職したことに対して会社から損害賠償請求や懲戒解雇処分がなされた場合には、顧問弁護士が撤回交渉にあたります。※事故による損害の扱いは会社との経緯によって異なりますので、申込み前にご相談ください。
★ トラック運転手の残業上限に関するよくある質問(FAQ)
Q: トラック運転手の残業に月の上限はありますか?
A: 法律上の月の上限はありません。自動車の運転の業務は、労働基準法140条により、一般の職種に適用される「単月100時間未満」「複数月平均80時間以内」の規制が適用されないためです。月の上限を決めているのは、会社が結んだ36協定です。そこに書かれた時間を超えて働かせれば、労働基準法32条違反になります。
Q: 年960時間以内なら、月に何時間残業しても違反にはなりませんか?
A: 違反になります。年960時間はあくまで年間の上限であり、月については36協定に定めた時間が上限として働きます。2026年8月に報じられた書類送検の事例も、36協定の月120時間を超えたことが労働基準法32条違反の疑いとされたものです。
Q: 自分の会社の36協定はどこで見られますか?
A: 労働基準法106条により、会社には36協定を作業場の見やすい場所に掲示するなどの方法で労働者に周知させる義務があります。事務所の掲示板、就業規則の綴じ込み、社内の共有フォルダなどを確認してください。見当たらない場合は、会社に提示を求めることができます。
Q: 改善基準告示に違反していたら、会社は罰せられますか?
A: 改善基準告示は厚生労働大臣が定める告示であり、違反に対する直接の罰則はありません。ただし労働基準監督署の指導対象になり、運行管理に関する重大な違反が疑われる場合は、労働基準監督機関から地方運輸機関へ通報される仕組みがあります。そこから車両の使用停止などの行政処分につながることがあります。
Q: 荷待ちの時間は労働時間に入りますか?
A: 指示があればすぐ動ける状態で待っているのであれば、労働時間として扱われます。給与明細の時間外労働の時間数が、運転日報やデジタコの記録より短くなっている場合は、荷待ち時間が労働時間から外されている可能性があります。
★ まとめ|上限を決めているのは36協定。まず自分の会社の数字を見る
トラック運転手の時間外労働は、特別条項を結んだ場合で年960時間が上限です。ただし月の上限は法律に定めがなく、月ごとの歯止めになっているのは会社が結んだ36協定の数字です。2026年8月に報じられた事例も、年の上限ではなく36協定の月120時間を超えたことが送検の理由とされています。
拘束時間や休息期間は、改善基準告示という別のルールで決まっています。1日13時間以内、休息は継続9時間を下回らない。この物差しでも自分の働き方を見てみてください。そして36協定は、会社が労働者に周知しなければならない書類です。見せてほしいと言うことに、遠慮は要りません。
判断の軸をひとつ挙げるなら、「上限を超えているか」より「この走り方をあと何年続けられるか」です。数字は後からでも取り返せますが、体は取り返せません。辞めることを選ぶなら、退職代行テミスが労働組合として、退職の連絡から有給消化と退職日の調整、未払い分の申し入れまでを引き受けます。相談は無料で、LINEなら24時間受け付けています。
体を削って埋めた穴は、誰も返してくれませんよ。
長時間の運行や未払いのことも、まずはLINEで状況をお聞かせください。
退職代行テミスは労働組合として会社と直接交渉します。
料金は正社員・契約社員・派遣社員は税込22,000円、パート・アルバイトは税込12,000円。相談は無料です。